天然麹菌なんていないと考えています。
うちの麹菌は菌株としては主にひかみ7号と名前がついている、丹波に縁のある
(というか、丹波で大昔に採取され育まれてきたとされる)
麹菌を使っているのですが、
これは大阪の種麹メーカー、樋口松之助商店さん、通称ヒグチモヤシさんから購入させてもらって使っています。
「天然の麹菌じゃないんですね…」
と言われることもあったりなかったりなんですが、
個人的には「そもそも天然麹菌ってなんやねん」と思っています。
菌には自然環境にうじゃうじゃと多種多様な菌が混ざった状態にいる野生の菌と、管理された単一の菌だけ培養した管理環境の菌とがいます。
さて、ここに違いはあるでしょうか。
これ、一般的な感覚では
“天然モノのブリと養殖のブリはやっぱり違うよな〜”
的な印象から、天然(野生)と養殖(培養)は違うよね!と思うかも、しれません。
でも、菌って、すごいシンプルな構造で増殖します。
ブリは育つまでに餌や育つ環境、運動させる量とかでやっぱり変わると思います。
でも、卵から孵ったばかりのブリの赤ちゃんって、養殖と天然モノと違いあるんでしょうか?
そんなに違いなさそうですよね。
菌はどっちかというと、もっと違いが無い状態なので、野生にいようが管理環境にいようが、
「株ごとの性質の違い」こそあっても
「育った環境の違い」
みたいなものは存在しないです。
なので、「天然の麹菌ってなんやねん」
と、僕としては思っています。
これは「天然酵母」という表現が一般化してしまった弊害だと僕は認識しているんですが、
(僕としては酵母も「天然酵母ってなんやねん」と思っています。)
そういったことから、天然の麹菌なんていない、という認識を僕はしています。
むしろ、野生環境の麹菌にはリスクの方が大きいです。
そもそも、麹菌は「カビ」です。
パンの表面に黒カビできてたら食べます?ふつう。
食べませんよね。
緑色でふわふわしてるやつできてたら食べます?
普通の感覚では、食べませんよね。
「天然の麹菌」というのはそういうことです。
麹はカビの仲間で、お腹を壊すカビと、有用な麹カビ、見た目で見分けなんてつきません。
だから、僕は、僕ら麹屋は、キチンと安全な、お腹を壊さない、有用で、しっかりと力のある、種麹屋さんが心血を注いで現代まで育んできた、麹菌を使います。
っていっても、その麹菌も全国では2000種類くらい株が管理されてる、なんて話もあります。
その中で「うちの麹」となる菌株を選んで、自分たちの色として、麹をつくります。
まぁ話がそれましたが、そんなこんなで「天然麹菌なんていない」と僕は考えています。