自家製みりんは作っちゃ駄目!?麹の活用法の落とし穴!
こんちわ!
丹波のおかしなこうじや本間です。
今日は一部でつくられている?と噂の自家製みりんについて解説をしていきたいと思います。
塩みりんならOK?
いやいややっぱりだめ?
なにが正解なの〜〜???
という疑問に、麹のプロとして答えていきたいと思います。
そもそもみりんって?本みりんとみりん風調味料
みりんはお料理につかう発酵調味料。古くから活かされてきたもので、「お酒の仲間」です。
このみりんのことを「本みりん」といいます。
よく似たものに「みりん風調味料」というものもあります。
これはアルコール度数を1%未満におさえたノンアルコールの調味料です。
なので、この本みりんとみりん風調味料は明確に区別されてます。
みりん風調味料はアルコールを含まないだけでなく、製造工程も全然違います。
本みりんは米麹ともち米、焼酎やアルコールを混ぜてじっくりと時間をかけて発酵させますが、みりん風調味料は水あめや酸味料などを混ぜるだけでつくられます。
※ここでの「発酵」は甘酒と同様の麹由来の酵素を活かした「糖化発酵」のことです。本みりんの発酵では麹由来酵素が活躍しますが、この間微生物は働かない、という特徴があります。
※本みりんの一部にも水あめなどの糖類が混ぜられていることもあります。というか、そっちのほうが多いかも。
ここからはこの「本みりん」を自家製してもよいの?という疑問を解消していきましょう。
自家製みりんをつくるのは犯罪行為!?
そうです。そうなんです。
実は、自家製みりんをつくることはれっきとした「犯罪行為」にあたります。
具体的には「酒税法違反」。
分かりやすく言うと、「脱税」です!
え?なんで脱税?と思うかもしれません。
これは「本みりんはお酒」と説明したことが関係しています。
日本のお酒、アルコール飲料には全て、「酒税」という税金がかかっています。
日本でつくったものはもちろん、輸入したものにも全て酒税がかかっています。
そしてこの酒税は製造者、つまりつくった人が支払うことになっています。(輸入の場合は輸入した人)
そう。つまり「自家製みりんをつくる」ことは「酒税がかからない”密造酒”をつくってしまう」ということなんです。
なので、酒税をおさめない行為と考えた場合、「脱税」とも言えるんですね。
そして、お酒づくりは免許制!作った分の酒税を税金として納めたら済む問題でもありません。
密造に使われた道具一式を没収されたり、悪質な場合は前科がついたり、と良いことなしです。
家でのみりんづくりは犯罪行為!ダメ絶対!覚えておきましょう。
塩みりんはセーフ??酒税法の抜け道…という真っ赤な嘘
はじめに結論を書いてしまいますが、「塩みりんも、限りなく犯罪に近い行為」です。
やらないようにしてください。
ではちょっと詳しく説明してきます。
塩みりんってなに?みりんタイプ調味料の不思議
「塩みりん」というものをご存知でしょうか?
これはみりんづくりの途中に塩をいれることで”意図的に飲めなくする”ことでお酒じゃなくしてしまおう!という製法のみりんのことです。
これは実際にスーパーなどでも商品として販売されているもので、「みりんタイプ調味料」とも言ったりします。
「本みりん、みりん風調味料だけじゃなくてもう1つあるの〜!?」と混乱されるかもしれませんが、
本みりんはお酒、酒税がおさめられたもので、
みりん風調味料はノンアルコールのみりんに似せた別物、
みりんタイプ調味料は、本みりんと途中までよく似た製法でつくるんだけど、”塩を加えてお酒じゃなくする特別な製法”でつくったもの。
言わば「しょっぱい本みりん」とも言えます。
ちなみに、この中で酒税が納められているのは本みりんだけ…
なので本みりんは値段が高い、とも言えます。
「しょっぱいみりん」をつくる特別な手続き…不可飲処置
みりんタイプ調味料の塩を加える特別な手続きは専門的には「不可飲処置」と言います。
飲めない(飲んだら病気になるかも)ぐらいの塩分濃度にすることで、お酒のカテゴリから外れて酒税を支払わずに済むようになります。
税務署に対して「○○な製法で、△△リットルの液体に□□キロの塩を入れて、塩分濃度を◇◇%にしたので、お酒じゃなくしました~」という報告をすることで、特別に認めてもらえます。
これをしないと、もしかしたら嘘をついてお酒のまま売ってしまっていた、なんてことも、もしかしたらあるかもしれないので、
この辺りはしっかりと調べられています。
自家製塩みりんは不可飲処置されたしょっぱいみりん?
いいえ、違います。自家製塩みりんはただの「塩入りみりん」です。
しょっぱいみりん、みりんタイプ調味料に税金をかからなくする特別な手続き「不可飲処置」は税務署に届け出てはじめて認められます。
なので、勝手につくった塩みりんには不可飲処置の手続きは適応されません。
「これはお酒ではない、調味料づくりだ」と言い逃れができなくもありませんが、
この辺りの判断は所轄税務署の胸先三寸。税務署が「あー、それは酒税法違反ですね」といえば直ちに犯罪になってしまいます。
そもそも、お酒に塩を加える行為も酒税法で禁止されていますから、その点を犯罪行為と解釈される危険性もあります。
塩みりんも「限りなく犯罪に近い行為」と覚えてください。
結論:自家製のみりんはなんであってもつくらない!
自家製でみりんをつくるのは塩が入ってようとなかろうと、「犯罪行為」と捉えられる非常に危うい行為です。
「塩みりん」で検索すると、塩を入れれば大丈夫〜という紹介のブログやレシピが出てきますが、これは全く違います。
自家製でのみりんづくりは麹のプロとして推奨できない行為です。
気をつけてくださいね。
おまけ・みりんがつくれないなら甘酒をいれればいいじゃない
かつて、マリー・アントワネットは言いました。「パンがなければブリオッシュを食べればいいじゃない。」と。
(※なお実際には言ってないとされる)
コウジー・アントワネットも思うのです。
「みりんがダメなら、甘酒を使えばいいじゃない。」と。
(※誰やねん)
いやほんとに、なんで危ない橋を渡ってまでみりんをつくりたがるのでしょうか。甘酒でいいじゃない?と思います。
みりんは保存がきく、独特の蜜のような風味がある、液体で使いやすい、ロマンがある…
いずれも、確かに理解はできます。
でも、それは必ずしもみりんじゃなくてもできることです。
保存をきかせたいなら、甘酒は濃縮にしたら冷蔵庫でもかなりもちます。
冷凍したらめちゃめちゃ長く保存できます。
蜜みたいな風味はメイラード反応なので、甘酒づくりの発酵期間を伸ばせば、だんだん香ばしいみりんのようなニュアンスに近づいていきます。
甘酒だって、薄めて、上澄みだけをとって、煮詰めれば、みりんのような液体にできたりします。
ロマンに関してはどうしようもないので、「海外でやりましょう!」と言う他ありませんが…
甘酒、割と万能ですよ。甘酒。
甘酒で十二分に、代用できます。安心してください。
おまけのおまけ。どうしてもみりんがつくりたい人のための裏技
あんまり大っぴらには言いたくないのですが、酒税法に違反しない、みりんに近いような風味のものをつくる方法が一応、存在します。
それは、「めっちゃ濃くつくって半固形のペースト状にする」ことです。
もはやみりんじゃないじゃん、液体で使えないじゃん、というツッコミポイントはありますが、
少なくともこれは酒税法違反にはなりません。
酒税法は「液体、もしくは粉末」に当てはまる法律で、固形のものは対象にしていません。
なので、加える焼酎やホワイトリカーの量を減らして、麹ともち米の割合を増やすし、ねっとりとしたみりんをつくれば、それはもはやお酒ではありません。
この製法だと、
- 表面のアルコール分が揮発したらカビが生えるので、アルコール分が飛ばないように目張りをしたり、アルコール分を定期的に吹き付けるなどの工夫が必要
- 水分量が少ないので、溶けていくのに時間がかかる
- みりんとしては使いづらい
などの問題もありますが、一応、みりんのような風味には近づいていきます。
塩を加えるよりも、よっぽど安全に、みりんに近いものをつくることができるとおもいますよ。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
まとめ:おかしなこうじや的、今回の教育的価値
・手づくりみりんは犯罪
・手づくり”塩みりん”もほぼ犯罪
・家庭でのみりんづくり、ダメ絶対
・お手製がいいなら甘酒をつかいませんか?
・どうしてもやりたいなら半固形なペーストで。
おしまい。